大仙の若葉

たのしいアフィブログ

感想に困るサイコサスペンス「新・殺しのテクニック/次はお前だ!」

 

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 傑出した完成度を誇る本格ミステリ、 D.M.ディバインの「五番目のコード」を原作としたサイコサスペンスが、この「新・殺しのテクニック/次はお前だ!」である。

 もともと、ぼくは五番目のコードが数あるミステリの中でも一、二を争うくらい好きな作品であったので、いずれは見ようかと思っていたんだが、いまいち食指が動かなかったんだ。でも満を持して見たんだ。

 あらすじをかるく説明すると、教師が襲われたことに端を発する連続殺人の容疑を新聞記者である主人公にかかってしまったので、がんばって汚名を晴らそうという話だ。

五番目のコード (創元推理文庫)

五番目のコード (創元推理文庫)

 

 

 

 結論を言ってしまえばこの映画、おもしろいかと言われればそうでもなく、つまらないかと問われればこれまたそうでもない、なんとも感想に困るシロモノだ。もし自分が原作を未読であれば素直におもしろいと言えたんだろうけど、原作を読んだうえで視聴にのぞむと、結構な数の相違点が気になり、結果としてもやもやした気持ちを抱えたまま見終えてしまった。なかには意味のある変更があったが、大半が意味のわからない変更であった。

 

 まずは意味のある変更を挙げていこう。

 一、 犯人の独白の記録媒体が、タイプライターから録音になっている。

 これに関しては映画という映像主体の媒体ゆえ仕方のないことなので許しましょう。むしろ、これにより犯人の不気味さが際立ったので、いい変更だったのではないでしょうか。

 

 以上。

 

 つぎに意味の分からない変更点だが、細かなところが多いので、大まかな変更点を挙げるのにとどめて、気になる人には実際に見てもらおう(ステマ)。

 一、 登場人物の名前や性別の変更。

 この映画に限った話ではないが、ひと昔前の原作のある映画っていうのは、登場人物の名前の変更が多い気がする。ウィリアム・ピーターセンが出てる方の「レッド・ドラゴン」とかね。それくらいしか出てこんけど。しかし、ちょいネタバレになるが、性別の変更の結果、個人的に犯人のサイコ感が増した気がするので、そういう意味ではよかったんじゃないかなあ。

 

 二、 被害者の変更。

 原作では、被害者が被害者たるゆえんがあったので、ここは変えちゃダメだろう、と思いつつも意表を突く展開ではあったので、おどろいてしまったことが地味に悔しい。だが、この結果、ひとひねりある事件の構図が、面白みのない真相へと変わってしまっあので、やっぱり改悪だと思います。

 

 事件の構図の面白みが薄くなる一方で、犯人のサイコ感が増したりと、一長一短な映画である。ゆえに反応に困るわけだが、好きな部分もそこそこあるのである。例を挙げれば、主人公とルーとの関係性である。原作では新聞記者ゆえの豊富な行動力とは裏腹、やけにセンチメンタルな内面をもっている主人公とルーの相性はあまりよろしくなかったのであるが、 内面と外面ともにたくましい映画での主人公とルーの相性は抜群であった。そのせいで、原作でのメインヒロインであるヘレンの影が薄く、若干うざくなっていた。

 

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 主人公のアリバイを偽証したあとの、別れの場面である。主人公がそのセンチメンタルさを見せるルーとの別れの場面も、映画の方ではあとくされないかっこいいものになっていた。

 

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 恩を着せることもなく、信頼関係を保ったままの別れ。この辺に関しては、映画版の方が好みである。

 

 次に、主人公が警察に連行されるシーン。原作では、うまい具合に主人公のアリバイを証明できる時間に犯行が起きたために容疑が晴れるのだが、映画の方では、主人公が自ら身の潔白を証明するチャンスをつかんでいる。警察を相手に、おのれの決意を場面はなかなかにかっこいいものである。

 

 

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 感想に困る作品ではあったが、思い返してみれば、前述のように好きな場面もあり、なんやかんや最後まで楽しめた気もするので、意外と好きな作品かもしれない。

 

 気になった人は、ぜひ見て、原作と読み比べたりもしてほしい。なお、今作のDVDはamazonで中古が五千円と定価超えしており、いまいち手を出しにくいが、今作を含めたシリーズのまとめBOXが(邦題が同じなだけで話のつながりは一切なし)、なぜか中古で四千円くらいなのでそちらを買われたし。