軟弱な映画ばかりがはやる現代。そんな時代に一石を投じるべく、そこらの人間であればむせ返るレベルの漢臭さを醸す映画を選んでみました。青春やら恋愛なぞクソ食らえ。女の支持なぞいらん。女にばかり媚びを売る最近の映画に辟易している人なら楽しめるよ。
チョウ・ユンファ、ジョン・ウーの出世作にして、香港ノワールというジャンルを作り出した、漢臭い映画の代名詞。あまりにも定番すぎて、この作品を出すやつはにわか認定される。
マフィアである主人公が、これを機に足を洗うと決めていた仕事にてハメられ、同行していた部下を逃し、自身は警察に捕まり豚箱行きとなる。出所後、正体を知った弟からは憎まれ、親友は仇討ちにて足を負傷し、いまでは雑用以下の扱いを受けていた。ある者は信頼を、ある者は誇りを。男たちは失ったものを取りもどすため、銃を手にした!!。
ティ・ロンの贖罪のための奔走に胸を打たれ、チョウ・ユンファのかっこよさに酔いしれる。迫力のガンアクションに、友情、家族愛、贖罪を高水準で絡めた熱きドラマ。漢臭さという観点から見れば、何ひとつ欠点のない完璧な映画である。
ワイルド・ブリット 監督 ジョン・ウー
とある事件をきっかけに町を出て、ベトナム戦地であるサイゴンへと赴き、もがき苦しむ三人の青年を描く。友情、裏切り、復讐という、香港映画の三本柱を濃密にシナリオに落とし込んだ、ジョン・ウー渾身の作品。どれくらい濃密かというと、二時間ちょっとの映画ではあるが、鑑賞後の余韻は三時間の映画に勝るほどだ。友情を重んじたがゆえの末路。友情より金を優先したがゆえの末路。登場人物のことごとくが、幸せとはいえない末路を迎える。漢臭い以上に泥臭い、独特のパワーを持つ映画である。
レクエイムー最後の銃弾ー 監督 ベニー・チャン
この映画ほど友情に重きを置いた映画を、ぼくは知りません。
麻薬王を引っ捕らえるべく潜入捜査を敢行する三人の警察官の友情と裏切り、そして、その先を見せてくれた香港ノワールの傑作。友情からの裏切りという香港映画の定石にとどまらず、そこからのありそうでなかった展開。クライマックスはあまりの臭さに笑ってしまったほどだ。一歩間違えば、陳腐になりかねない展開を、これほどまでに熱く描いてくれた。エンドロールにて流れる曲の歌詞が、これまたそそる。
インビジブル・ターゲット 監督 ベニー・チャン
臭い。展開がとにかく臭い。でも、それがいい。臭い展開を作らせたら右に出るものはいないベニー・チャン監督による、渾身のアクションエンターテインメント。
現金強奪事件をきっかけに、犯人グループと三人の警官が対決。ニコラス・ツェーの体を張ったスタントと、ウー・ジンのキレッキレの足技を堪能できる本作。
クライマックス、圧倒的強さを誇るウー・ジンの隙を作るべく、足に組み付くジャッキーの息子。その後の、ニコラスとショーン・ユーの「ああ、こいつらキレてるわ」となる表情が最高である。
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ファイヤーレスキュー 監督 デレク・クォック
トミカヒーローじみたタイトルの本作は、香港ノワールのテイストを落とし込んだ、パニック映画の皮を被った実に男臭いドラマだ。極限状態での男たちの確執。そして、友情。これでもかといわんばかりの現場ハプニングの連続。その果ての自己犠牲には、感動よりも喜びを感じてしまう辺り、ぼくはやっぱりこういう映画が好きなんだなあ、と思ってしまいます。火災現場が舞台のくせして、映像的に派手な火をあまり出さないあたり、火よりも煙のが怖いんだよ的なメッセージが感じられました。まあ、火の怖さを教えてくれるパニック映画は他にもあるからね。
ファイヤーストーム 監督 アラン・ユエン
ファイヤー繋がりでこちらも。正義のもとに奔走するアンディ・ラウを描いた、無駄にド派手なポリスアクションだ。いや、ほんとうに派手だから。ストーリーは香港ノワールの王道を地で行っており、良くも悪くも新鮮味に欠ける。しかし、ド派手な映像、アンディ・ラウの体を張ったスタントのために見る価値はある。
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SPL/狼よ静かに死ね 監督 ウィルソン・イップ
サモ・ハン演じる暗黒街のドンを捕らえるべく奔走する刑事たちを描いた物語。サイモン・ヤム演じる刑事が病のための退職をしてしまう前に、是が非でもサモ・ハンを捕らえるべく、仲間たちと手段を選ばぬ捜査を敢行する。証拠の捏造や証人の殺害。刑事としての領分を超えた行動。正義と悪の垣根を超え、漢と漢の対決が水面下から直接のものまで全編にわたって繰り広げられる。
この映画の見所としてよく挙げられるドニー・イェンとウー・ジン及びサモ・ハンとの対決ではあるが、ストーリー的にはドニーは蚊帳の外感がある。とどのつまり、この映画はサイモン・ヤムとサモ・ハンの因縁がどのように収束するかと言った内容なのだ。ドニーとサモ・ハンには特に因縁や縁があるわけでもなく、サイモン・ヤムとの付き合いだって日が浅い。にもかかわらず、関わってしまう。刑事だからではない。漢だからだ!!。
なお、DVDが廃盤のため、地味に高い。
ウォーロード/男たちの誓い 監督 ピーター・チャン
なにやらはるか昔の中国の出来事をモチーフに描かれた映画らしいが、そういったことを知らんでも、余裕で楽しめる。歴史アクション超大作と銘打ってはいるが、派手な合戦が描かれるのは序盤のみで、その後は、戦いの最中の苦しみや衝突と言ったドラマが展開される。主演の三人の立ち位置や考えがしっかりと掘り下げられており、それぞれに感情移入することができる。国に尽くすジェット・リー。敵味方問わず、人の義侠心を重んじるアンディ・ラウ。ふたりに尽くす金城武の葛藤。中盤から終盤にかけての、結束が崩壊していくさまは、重苦しくもどかしい。
下町育ち仲良し四人組の行く末を描いた本作。
男の友情というのは行動で表すべきもので、言葉にする場合には当人のいないときに。「オレたちは、ともだちだよな」と口で言うのはなんか違うよなあ、という考えを払拭とまではいかずとも、こういうのもありか、と見識を広げてくれた作品だ。本作、主演のユ・オソンがいちいち友情を言葉にする。はじめは鼻で笑っていた僕も、徐々に、彼の友情は本物だと思うようになりました。彼にとって、チングと過ごすときだけ自分でいられたのでしょう。
モンガに散る 監督 ニウ・チェンザー
転校生がヤクザの息子たちと仲良くなっていく話だ。任侠、恋愛、青春。さまざまなエッセンスを混ぜ込んで生まれた、青春ノワールの傑作。この手の映画にて紡がれる友情なんて、壊れるのが確定しているようなもんじゃないですか。だからこそ、前半、爽やかなはずの雰囲気がどこか切ない。みずみずしさと残酷さを兼ね備えた作風は唯一無二。
さらば友よ 監督 ジャン・エルマン
そこらの女に頼まれ、金庫のを破りに来たアラン・ドロンが、チャールズ・ブロンソンと鉢合わせし、一緒に金庫を破ろうと奮闘する話だ。金庫破りというと、プロフェッショナルな犯罪者が実にスマートに解錠、というイメージだが、今作では実に地味にこつこつと、正解の番号を当てるまでつまみを回しつづけるのだ。そんな絵面的にひとかけらの面白みも感じられないものを面白くしてくれるのは、ひとえにふたりの衝突だろう。片方がドアを締め入ってこれないようにしたり、自販機?のビールを買い占めたり、やってることがまるで子供なのだ。そういった子供じみた衝突を繰り返すうちに芽生える友情。しかし、この映画の真の面白さは金庫を破り終えた後なのだ。決してベタベタしない。しかし、確かな友情がある。アランドロンとチャールズ・ブロンソン、ふたりの魅力が極上のハーモニーを醸し出す。
チェイサー 監督 ジョルジュ・ロートネル
親友を殺さえたアラン・ドロンが、復讐のため政界の闇を暴こうと奮闘するサスペンス・アクションの快作。
本作の魅力は何と言ってもアラン・ドロンのかっこよさだ。美形俳優なんてのは、この歳にもなってくるとボロが出てくるものだが、アラン・ドロンの場合は、この時期が全盛期といってもいいだろう。美しさと年特有の渋みを兼ね備えたアラン・ドロンにメロメロだ。なかなかの美女を出しておきながらロマンスに走らないのも、気に入っている点だ。
あるいは裏切りという名の犬 監督 オリヴィエ・マルシャル
迫力の銃撃戦。権力争い。漢たちの確執、復讐。じめじめとした映像。漢臭いもの好きの好む要素を極めて高い水準にまとめ上げた、いぶし銀ハードボイルド。序盤、様々な出来事が並列して語られ、それらが無駄なく何処かに繋がる秀逸な脚本も本作の魅力だ。
現金強奪事件が発生し、この事件を解決した者に、次期警察長官のポストを与えよう、と言った内容。かたわら主人公は殺人の片棒を担がされるわ、相棒が死んじゃうわと、どんどん不幸が重なり挙句の果てには豚箱行き。出所後、主人公が撮った行動とは。
フランス、香港、韓国は実に男臭い映画を撮ってくれる。国々で特色がある。その違いが、本作と「男たちの挽歌」「友へ チング」を見ればわかるでしょう。一口に男臭いと言っても、なにを前面に押し出すかで同じジャンルでありながら、違った面白みがあるのだ。
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そして友よ、静かに死ね 監督 オリヴィエ・マルシャル
主人公と親友たちとの波動の過去と、ムショ送りとなった親友の救出、そして結末を描く骨太フレンチノワール。
この映画の見所はふたつ、終盤、主人公がモブの顔面にクッションをあてがい射殺するシーンだ。そのあまりにも手慣れっぷりスマートっぷりには、惚れ惚れしてしまう。そして、中盤、目を覚ましたらガラの悪そうな連中がいて、「あいつの居場所言わなかったら、ち○こ切るぞ」となるシーンだ。いやあ、怖かった。めっちゃ心臓がバクバクした。この映画を見た頃はまだ、男臭いものにはあまり手を出していなかったため、こういったバイオレンスチックな描写、展開には慣れてなかったんだ。
主人公があまりアクションに絡まないのは、ちょっぴり残念だったけど、年だからね。
友よ、さらばと言おう 監督 フレッド・カヴァイエ
うっかりマフィアの殺害現場を見てしまった息子を守ろうと奮闘する父親とその親友の話だ。特筆すべきは親友の主人公への肩入れっぷりだろう。クライマックス、主人公のピンチを察した親友が、車をかっ飛ばすシーンは最高だ。なぜそこまで主人公のために動くのか。友情だけにとどまらない、その理由が明かされるラスト、息子を守るための戦いの物語に、また別の側面が見えてくる。
インファナルディール/野蛮な正義 監督 クリス・ブリンカー
とある犯罪組織を撲滅させるため、ひっ捕らえた元殺し屋にスパイをさせる話だ。刑事と犯罪者。かたや終身刑を逃れるため、家族と再び共に過ごすため。かたや組織の撲滅のため。利害でのみ成立する関係。刑事と犯罪者の関係を超えた友情なんてものはなく、そういうのを期待してみた自分としては、ちょっぴり肩透かしではあったが、マット・ディロンの家族への思いには胸打たれ、ウィレム・デフォーとともにいまいちうまくいかない捜査にヤキモキする。
友情なんてないと前述しましたけど、やっぱりちょっとあったんですよね。ただそれをあんまりしないというだけで。ウィレム・デフォーはなんとかマット・ディロンを守ろうとしますし、マット・ディロンの方も、最期のやりとりの感じ、多少の信頼を持っていたんでしょうね。
L.A.大捜査線/狼たちの街 監督 ウィリアム・フリードキン
パッケージの装いを新たに、ブルーレイの再発売が決定した本作。やけにB級臭いパッケージが胡散臭さを醸し出すが、内容は映画玄人をも唸らせるであろう骨太復讐劇だ。
相棒を殺された刑事が復讐を誓うというありふれた内容ではあるが、本作は復讐にとらわれるあまり法の垣根を超えてしまう主人公の狂気を描き出したことにより、ありがちな話とは裏腹、地味に癖のある作品となっている。これまた地味に後味の悪い結末と合わせて、地味に見る人を選ぶ作品。
ちなみに、主演が同じ「刑事グラハム/凍てついた欲望」という、これまた男臭い作品のブルーレイの発売も決まった。合わせて見よう。
これまたブルーレイがリニューアル発売されることとなった作品。
本作の凄さは、原作を読んでこそわかる。この内容を二時間に落とし込み、退廃的な雰囲気を作り出したカーティス・ハンソンの手腕には脱帽するしかない。一級のサスペンス、骨太な銃撃戦。刑事モノに必要な要素が、高水準で満たされている。
一つの事件をめぐる三人の刑事の群像劇。ラッセル・クロウとガイ・ピアースの対立からの共闘には胸を熱くさせられ、ケヴィン・スペイシーがガイ・ピアースに触発され、ふたたびまっとうな刑事になろうとする姿には憧れの念さえ抱く。
3時10分 決断のとき 監督 ジェームズ・マンゴールド
クリスチャン・ベイルの息子に見せる己の生き様には、西部劇でありながら現代人にも共感を。ラッセル・クロウの己のルールに従う生き方には憧れを。正反対なふたりに芽生えた奇妙な友情の果てやいかに。
西部劇に欠かせない銃撃戦も見応えがあり、徐々に追い詰められていくサスペンスフルな展開には、最後まで見せられてしまうパワーがある。
凶悪犯罪者のジャックに巻き込まれたニコラス・ケイジが奮闘する、アクション映画だ。特筆すべきは、やはりニコラス・ケイジのかっこよさ、戦いを通して芽生えた、ジョン・キューザックとの友情。信用できる人間が三人に増えた、という台詞はしびれたね。ド派手なアクション映画が見たい、というときにちょうどいいかもね。
暗黒街の親玉を引っ捕らえるべく立ちあがった四人の漢たち。個人的に好きなシーンは、チャールズ・マーティン・スミスが死ぬところだ。血で書かれた最期の言葉。「手は届くぞ」。思わず涙ぐんだね。
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言わずと知れたギャング映画の名作。正直なことを言うと、はじめて見たときはあまりおもしろいと思えなかったんだ。でも二回目はすごくおもしろかったんだ。ぼくと同じように、一回見て「う~ん?」となった人は、もう一度、見て欲しい。おもしろいから。
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ミッドナイト・ラン 監督 マーティン・ブレスト
デ・ニーロが数多い出演作のなかでもっとも気に入ったと言ったのが本作、らしい。ドタバタ道中記のさなかで芽生えた友情。切なくも爽やかな結末が、余韻に浸らせてくれる。
ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア 監督 トーマス・ヤーン
余命いくばくかの男ふたりが病院を抜け出して、海を見に行く話だ。全編に漂う、ドタバタしながらも侘びしい雰囲気が、視聴者を静かな感動へと導いてくれる。
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スパイゲーム 監督 トニー・スコット
見はじめてすぐ、「あ、ぜったいにこの映画はおもしろい」と思わせてくれる作品がある。ぼくにとって、それが本作でした。ロバート・レッドフォードが私財を投げ売ってまで、ブラッド・ピットを救おうと暗躍するさまは、静かな熱さがあります。ラスト、作戦名を聞いたブラッド・ピットが、だれが自分を助けてくれたかを察するシーン最高だ。
重犯罪特捜班 / ザ・セブン・アップス 監督 フィリップ・ダントー二
強引なおとり捜査ばかり敢行する捜査チームを描いた物語だ。いぶし銀とはまさにこのこと。とにかく地味だ。そして渋い。しかし、漢臭さは別格だ。裏切り、復讐、苦い結末。この手に映画に必要な要素がじつに渋く収まっている。
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「あ、おれ、マイケル・マンの映画見てるわ」となる臭い演出、臭い画面づくりがたまらない本作。ド派手な金庫破りとマイケル・マンお得意の銃撃戦が本作の魅力だ。
普通の生活がしたいにのにも関わらず、己の過去がそれを許してくれない。仕方なしに最後の仕事と割り切るも、待っていたのは友人の死。主人公は過去も今も捨て、単身、復讐に乗り出す。冒頭から哀愁漂う結末まで、男臭さをまき散らしながら進むストーリーに、もうメロメロだ。クライマックスの銃撃戦が、BGMとあいまってかっこよすぎる。
ヒート 監督 マイケル・マン
現金輸送車の襲撃事件から端を発する、刑事と犯罪者と対決、芽生える共感、訪れる結末。女なんてお呼びじゃねえ、と言わんばかりのむさ苦しさがたまらない。中盤、アル・パチーノの車が徐々にデ・ニーロに近づいていくシーン。BGMがまた良い。デ・ニーロの車に近づき「珈琲でもいかが?」。喫茶店にて対面するふたり。話がまた臭い。普段見てる夢の話なんて、陳腐になることを恐れて普通やらんよ。でも、かっこいい。次会ったら殺す、と互いに宣言。
銀行強盗でデ・ニーロの仲間が何人か死ぬんすよ。その内の黒人。そのことがニュースで流れて恋人の表情に現れる、悲しみとも呆れともなんとも言えない表情。
あとやっぱりラストね。マイケル・マンの映画って、どれもラストシーンがかっこいいんすよ。「言ったろ? ムショにははいらないって」と、腕を伸ばすデ・ニーロ。静かにその手を取るアル・パチーノ。エンドロール。たまらんね。
インサイダー 監督 マイケル・マン
依存性をひた隠しにしているタバコ業界と対決するジャーナリストと内部告発者を描いた本作。
安寧と引き換えに真実を話すか否か、ラッセル・クロウの葛藤を描いた前半。託された真実を無駄にしないためのアル・パチーノの奔走を描く後半。
上層部の判断により、真実を収めたインタビューが放送されなくなったときのアル・パチーノの弁舌には胸が熱くなる。しかし、映像は結局お蔵入り。それでも諦めないアル・パチーノの奔走には、自身のジャーナリズム精神に裏打ちされた、不屈のかっこよさがある。ラッセル・クロウに電話で活を入れるシーンなんて最高だ。それより最高なのがラストだ。やれることはやった、と言わんばかりの後ろ姿。背中で語るとはまさにこのことよ。
だれがなんと言おうと、アル・パチーノがもっともかっこいい映画はこれだ。
以上、軟弱な現代だからこそ見るべき映画たちだ。俺様の選別眼に狂いはないので、たまには違ったものが見たい奴から、軟弱な映画に飽きた奴まで、安心して視聴に臨むがよい。もっと紹介したい映画もあったが、この手の映画ってのは監督が同じ作品が多くなるもので、そういった作品は今回紹介したものを見てれば、自ずと流れ着くと思うので省いた。なので同監督は二作までにどとめた。
偉そうに書いていますが、自分の知らない作品もまだまだあると思うので、面白い映画なりなんなりがあったら教えてください。