大仙の若葉

たのしいアフィブログ

ジャック・カーリィを読もうぜ

 二年の歳月を経て、新作の刊行がきまったジャック・カーリィ。2013年に発表された作品の邦訳がいまってどういうことやねんと地味に思いますが、訳書なんてのは大概そんなもんだと割り切るべきなのでしょう。カーリィだけの話でもありませんし。8作目を抜かして9作目が先っていうのもどういうことやねんと思いますが、6作目も抜かされていますし、海外のシリーズものの邦訳パターンなんてそんなもんです。

 というわけで、カーリィの作品を振り返りましょう。カーリィの作品は大概が高評価されていまして、いざ読書に臨んでみると期待値が高まりすぎたがゆえ「あれ?」と思うことも多くありません。ですので、これまたカーリィに限った話ではありませんが、読んだあとボロっクソに叩いてやるぐらいの気構えで読んだほうが楽しめます。それが創作物をもっとも楽しめる姿勢です。

 

 

  • 百番目の男

連続放火殺人を解決、異常犯罪担当部署に配属された刑事カーソンには秘密があった。誰にも触れられたくない暗い秘密だ。だが連続斬首殺人が発生、事件解決のため、カーソンは過去と向き合わねばならない…。死体に刻まれた奇怪な文字に犯人が隠す歪んだ意図とは何か。若き刑事の活躍をスピーディに描くサイコ・サスペンス。

 記念すべき一作目です。殊能将之が変態本格ミステリベストという、いささかニッチなベストの中に本書を入れています。期待値が高まりすぎて云々と前述しましたが、本書の関しては天井を貫くレベルで期待値を上げさせます。これを読んで驚かないやつはいないぞ!!。

 本書を読んでの反応はふた通り、心臓が飛び跳ねる驚きを覚えるか、「ええ……」という呆れにも似た驚きだ。ベクトルは違えど、同じ驚きだ。

百番目の男 (文春文庫)

百番目の男 (文春文庫)

 

  

  •  デス・コレクターズ

 死体は蝋燭と花で装飾されていた。事件を追う異常犯罪専従の刑事カーソンは、30年前に死んだ大量殺人犯の絵画が鍵だと知る。病的な絵画の断片を送りつけられた者たちが次々に殺され、失踪していたのだ。殺人鬼ゆかりの品を集めるコレクターの世界に潜入、複雑怪奇な事件の全容に迫ってゆくカーソン。彼を襲う衝撃の真相とは。

 海外優秀本格ミステリ顕彰という、作家たちによる内輪のベストに選ばれた本書。サイコサスペンス風味の本格ミステリという、ぼくを狙い撃ちしたかのような作風です。百番目の男は真相にこそ驚かされましたが、本格風味が薄く感じたので、そういった意味で本作は大満足です。絵画だかなんだかの紙片が死体に添えられてるんですね、その理由付けには唸らされました。ヒロインがうざいのが玉にきず。というか、カーリィの作品に出てくるヒロインは大概うざいです。

デス・コレクターズ (文春文庫)

デス・コレクターズ (文春文庫)

 

 

  • 毒蛇の園

 惨殺された女性記者。酒場で殺された医師。刑務所で毒殺された受刑者。刑事カーソンの前に積み重なる死―それらをつなぐ壮大・緻密な犯罪計画とは?緊迫のサイコ・サスペンスと精密な本格ミステリを融合させる現在もっとも注目すべきミステリ作家カーリイの最新傑作。

 カーリィの作品は本格ミステリの体をなしてはいますが、フーダニットの側面は薄く、ホワイダニットに全ふりしています。なぜ? の部分の驚きを最大限に届けるための伏線。それらが気持ちよく回収されていく終盤。スピーディーな物語運びとともに紐解かれる事件の構図は、毎回読者を驚かせてくれます。

 ルーカスとかいう類人猿の正体は誰でも察しがつくでしょうが、ルーカスの狙いはなんなのか、それが明かされたときには普通に驚きました。他の人の感想を見た感じ、それも読めてた的な感想が散文してますが、うるせえ、おれはおどろいたんだよ。

毒蛇の園 (文春文庫)

毒蛇の園 (文春文庫)

 

 

  • ブラッド・ブラザー

 きわめて知的で魅力的な青年ジェレミー。僕の兄にして連続殺人犯。彼が施設を脱走してニューヨークに潜伏、殺人を犯したという。連続する惨殺事件。ジェレミーがひそかに進行させる犯罪計画の真の目的とは?強烈なサスペンスに巧妙な騙しと細密な伏線を仕込んだ才人カーリイの最高傑作。

  本書はミステリとしてよく出来ているのはもちろんなんですが、人間ドラマとしてもなかなかに優れているんですね。あらすじを読んでわかる通り、主人公のアニキは殺人者でなかなかのサイコ野郎なんですね。で、そのことを隠しながら捜査に参加するんですね。こっちだけじゃわからないことがあるからって、地元の相棒と連携を取りながら捜査するんですけど、相棒が言うんですね、追っかけてるやつが自分のアニキだって言ったのって?。主人公口ごもるんですね。不安になるんですね。怒られるかもって、軽蔑されるかもって。裏腹、相棒はただ自分にやってほしいことを聞くんですね。相棒の主人公への思いやりを感じられる、見事なくだりですよ。あと、主人公がパイプ椅子を床に叩きつけるくだり。他の警官たちの見当違いな捜査を軌道修正するため、アニキを止めるための決意の現れ。それまで煮え切らない態度ばかりとっていた主人公が、いっきに主導権を握るなかなかに熱い場面です。

ブラッド・ブラザー (文春文庫)

ブラッド・ブラザー (文春文庫)

 

  

  • イン・ザ・ブラッド

 刑事カーソンが漂流するボートから救い出した赤ん坊は、謎の勢力に狙われていた。収容先の病院には怪しい男たちによる襲撃が相次いだ。一方で続発する怪事件―銛で腹を刺された男の死体、倒錯プレイの最中に変死した極右の説教師…。すべてをつなぐ衝撃の真相とは?緻密な伏線とあざやかなドンデン返しを仕掛けたシリーズ第五弾。

  シリーズものにおける異色作に、本作は当たります。作品ごとにヒロインが変わるんですけど、本書はでないんですね。ついでにサイコな要素も少なめですし。しいていうなら、主人公が若干サイコと化す。サイコっつうか、どうした? みたいな。なんか盛られた? みたいな。事実盛られたんですけど。

イン・ザ・ブラッド (文春文庫)

イン・ザ・ブラッド (文春文庫)

 

 

  • 髑髏の檻

 刑事カーソンが休暇で赴いたケンタッキーの山中で連続殺人が。犯人はネット上の宝探しサイトで犯行を告知し、死体はどれも奇怪な装飾を施されていた。捜査に巻き込まれたカーソンの前に現れたのは、実の兄にして逃走中の連続殺人鬼ジェレミー。ディーヴァーばりのスリルとサプライズで人気のシリーズ第6弾。

  楽しい旅行のはずが事件に遭遇というのはもはや様式美です。大概の作品は旅行パートと事件パートがくっきり分かれてるじゃないですか。ですけど、本作は旅行のかたわら事件、もしくは事件のかたわら旅行って感じで、割と全体的にスローペースで、凄惨チックな事件もどことなくほのぼのしてるんですね。もちろんハラハラする部分はありますよ。主人公が犯人と思われる男から追っかけられる場面とか。クライマックスとか。クライマックスはすごいですよ。現場を想像すると軽く笑えますよ。いや、主人公たちはすごい必死なんですけど、必死ゆえのおもしろさみたいな?。

髑髏の檻 (文春文庫)

髑髏の檻 (文春文庫)

 

 

 というわけで、現在日本で刊行しているジャック・カーリィの作品たちです。残りの作品を邦訳するまであと何年かかるのかはわかりませんが、打ち切られるかもしれませんが、祈りましょう。読みましょう。売上に貢献しましょう。金になるなら出版社も出してくれます。