大仙の若葉

たのしいアフィブログ

ウィル・グレアムの人物像について

 トマス・ハリスというと、やはり「羊たちの沈黙」ということになるんだろうけど、ぼくは見たことがないんだ。女主人公ってのが嫌いだからね。だから「レッド・ドラゴン」の方に手を出したんだ。おどろいたのが、レクター博士の登場が、二十ページにも満たないということ。それでいながら、全編にレクター博士の影がちらついているような感じがある。レクター博士の魅力というのが、この一冊だけでも十二分に伝わったよ。るーすぼーいがG線の発売記念ファンブックだかなんだかに、好きな悪役に彼を挙げた理由が何となくわかったよ。でもぼくは、レクター博士よりも主人公であるウィル・グレアムの方に魅力を感じたんだ。

レッド・ドラゴン〔新訳版〕 上 (ハヤカワ文庫NV)

レッド・ドラゴン〔新訳版〕 上 (ハヤカワ文庫NV)

 

 

 

 ウィル・グレアムの何に魅力を感じたかというと、大まかに分けて二つだ。アメリカンサスペンスにあるまじき、なよなよした男であるということ。そして、優れた直感により犯人の思考を辿ることができるという、とてもクールな設定だ。その特性によりレクター博士を逮捕することができたんだ。でもそれがきっかけでFBIを引退しちゃうんだ。犯人の思考をトレースできる元FBI捜査官なんて、とてもかっこいい肩書きだね。でも彼にとっては、その特性こそが悩みの種なのさ。犯人の思考を辿れるってことは、自分も殺人者と同類ちゃうんけ? ってね。レクター博士にも、自分を逮捕できたのは似た者同士だからやでって言われちゃうしね。そういった主人公の悩みも「レッド・ドラゴン」の面白いところだよ。そういった悩みゆえに、前述したように彼はすごくなよなよした男なんだ。妻からちょっと冗談を言われただけで(´・ω・`)ショボーンとなってしまうクソ雑魚メンタルだし。でもそういった弱さを抱えながらも、犯人を追いかける姿は、やはりかっこいいね。だからぼくは、はじめてこの小説を読んだとき、主人公がコンプレックスを克服する成長小説的な側面もあると思ったんだけど、そんなことはなかったんだ。克服するどころか、羊たちの沈黙において、妻子に見捨てられ、酒浸りの生活になっているらしい。そういったわりかし悲惨な結末を迎えてしまった原作とは裏腹、映像化作品においては、わりとハッピーエンドだ。結末だけでなく、人物像も結構変わるんだ。そういった幅広さも彼の魅力だと思うんだ。

 

 「レッド・ドラゴン

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 エドワード・ノートン演じるウィル・グレアム。原作特有のなよなよさはあまりなく、きまじめなFBI捜査官としての側面が強い。妻子との関係も最後まで良好。いまいち面白みに欠ける人物像になってしまってるけど、エドワード・ノートンがかっこいいから許す。クライマックス、逃げ出したあげく気を失い、息子は妻が助けてしまった原作とは逆に、こちらでは息子を守ろうと犯人に立ち向かう良いパパさん。犯人のトラウマをつついて息子を助け出すくだりは、原作にはないものでしたが、なかなかうまい。最後、家族でヨットに乗りながら、エンドロール。レクター博士からの手紙を読んで、なんとも思っていないあたり、なかなかに強いメンタルですね。

 

 「刑事グラハム/凍てついた欲望」

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 ウィリアム・ピーターセン演じるウィル・グレアム。肉体的にも精神的にもタフ、かつ異能感もしっかり全面に押し出す、最強のウィル・グレアム。はじめてみたときはびびったね。お前そんなキャラじゃねえだろ。雨が降りしきる夜、窓ガラスに映った自分に向かい、「お前と俺の勝負だ」とつぶやくシーンは、さすがマイケル・マン。とても臭くてかっこいい。犯人、家族ビデオ見てたんちゃう? と気づくくだりは原作もノートン版もかっこいいのですが、今作にはやはり劣るね。静かながらも熱く、徐々に真実に気付きはじめてる感は今作だけです。

「ビデオ二つとも同じ制作会社でしょ?」

「いや、違いますね」

「ラベルめくってみ?」

「……あっ!」

 ていうくだりとかすごくかっこいいですね。もうすべてに気づいてる感じ。

 犯人をやっつけて、家族と再会。冒頭で息子と埋めてた亀の卵が孵る。エンドロール。サイコサスペンスにハードボイルドのテイストを加えるとこんな感じになりました! みたいな映画でしたね。いやぁ、よかった。

 

 「HANNIBAL / ハンニバル

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 ヒュー・ダンシー演じるウィル・グレアム。映像化作品のなかでもっとも、ウィルの異能を全面に押し出しています。ウィルの苦悩と、徐々にレクター博士に呑まれていってる感じがとても丁寧に描かれていますね。今作のウィルとレクター博士の関係は、こう、見ててドキドキしますね///。ぶっちゃけると、まだ途中までしか見てないんで、どうなるか楽しみですね。

 という、ミーハーじみたクソみてえな感想で締めです。