大仙の若葉

たのしいアフィブログ

真田広之の最高傑作はこれだ!「眠らない街 新宿鮫」感想

 好きな日本の俳優を答えろって言われたら、真田広之と即答するだろうが、困ったことに特に好きな出演作がない。強いて言うなら「吠えろ鉄拳」とか「高校教師」が好きだけど「コレっ!」って感じでもない。そんな中見てみた。「新宿鮫」だ。amazonで在庫なしになっている。俺が買ったからだ。新宿鮫、存在こそ知っていたが、いまいち見る気になれなかった。「作家になるための全技術」っていう本読んで、作者がなんかむかつく人となりしてたから、断じてこいつの本を読んでやるものか、という謎の意地を張っていたからだ。でもそんな意地をかなぐり捨てて見てみた。さすがに原作にいきなり手を出すのは癪に障る。原作あるものは先に原作見たい派の俺からすれば、いささか抵抗感があったが、こいつへのむかつきと真田広之が好きという気持ちを相殺させ、映画を見た。やるやんけ、と思った。感想は後述するとして、まずは僕の真田遍歴を書きたい。ハートブルーの感想以上にペランペランな、ただのいちゃもんだけど、溜まりに溜まったヘイトを発散したい。不快になったらごめんね!。

 そういう制約でも背負わされているのか、真田広之はたいがいの作品で恋愛している。それが原因で、勘弁してくれ、となった作品は数知れない。「リメインズ」とか最悪だ。ヒロインさえいなければ、素直に好きと言えた。自然! アドベンチャー!みたいな内容かと思ったら、内容の三分の一くらいをヒロインに復讐を決意させる回想的なものに費やされていた。この女を主人公にして撮れよっていうくらいドラマ部分をこの女が背負っていた。真田広之目当てで見たら肩透かし食らう映画ナンバーワンだ。「真夜中まで」とかも最悪とは言わずとも、全編に渡る胡散臭さがあった。べつに恋愛してないけど。べつにミシェル・ヨーそんな嫌いじゃなけど、なんか出てほしくなかった。あと質屋的なババアもうざい。ホームレスもうざい。ジャズを題材にしているがゆえのシャレオツな雰囲気が好みなだけに、邪魔なノイズが多すぎるのが残念だった。「里見八犬伝」なんかもアレだ。アレすぎて泣きたくなってくる。薬師丸ひろ子がヒロインなせいで何もかも台無しだと言っていい。なんなんだこの女は。イモ臭いくせして幸薄美人を気取ってる感じ好かん。まっとうにエンターテインメントしているだけに、そこが本当に残念だ。真田広之千葉真一もかっこいいだけに、とにかく残念だ。「伊賀忍法帖」も似たような理由でアレだ。だけど、一番最悪なのが「エマージェンシーコール」だな。医療ドラマの皮を被ったただのロマンスだ。序盤が本当に面白そうな予感を感じさせてくれるだけに、話が進むにつれて「もうやめてくれーっ!」となってくる。割と簡単に人が死んだり、貧困だったり、フィリピンってこんな町っていうのを示して、そこで医師として暮らす真田広之!。差別される、院長からの風当たり強い。なんか医者やんの嫌だわ……ってなってて、そこからいかに人情を持つようになるのかって言う感じで、「ええやん!」って思ったけど、いざ蓋を開けてみれば、恋愛。勘弁してくれ。「怪盗ルビィ」とかも何なんでしょうね。なんで原作から性別を変えるのか。三枚目を演じる真田広之が嫌いじゃないだけにそこが残念だ。

 というわけで「新宿鮫」だ。真田広之の演じる鮫島が実に素晴らしい。奥田瑛二に捕まったときに、クッソびびりながら「傷口を舐めてくれッ!」って懇願しているのが、見ててゾクゾクした。だからそのあと田中美奈子を抱く場面がすんなり受け入れられた。ホモに殺されかけたら、そりゃあ女体が恋しくなるよね。真田広之の良いところって、こういう情けなさとかっこよさが混在している役が似合うところだと思うんだ。本作の鮫島の役どころが、そんな真田広之を存分に引き出してくれている。中盤の髭を生やしたセルピコスタイルの真田広之。こういうワイルドな感じの真田広之が見れるのって地味に本作だけかもしれない。

 で、映画のほうが面白かったから、原作を読んでみた。映画だけだと、「ん?」ってなったところがちょいちょいあったから、そこらへんを解消した上でもう一回見るため読んでみた。なんか微妙だった。真田広之を離れ、紙上の存在となった途端、鮫島という男が急に胡散臭くなった。潔癖すぎる感じがいけ好かん。この小説、本文の三分の一が、三分の一は盛ってるかもだけどそれくらいの体感だったという話だ、が、「鮫島ってこういう男!」っていう説明に費やされている感じがした。そのせいでどうしても説明過多っていう印象になった。べつに「悪は絶対に許さないッッ!」っていうキャラが嫌いといわけではないんだけど、それを前面に出されすぎて「う~ん……」ってなった。映画と同じように、情けない面ももちろんあったんだけど、それが顕著に出る場面、映画で奥田瑛二が演じていた木津ってやつに捕まっちゃう場面が映画だと結構ねっとりやってたのに対して、あっさりしていた。「なんか潔癖すぎるキャラだから、情けないところも作ってバランスとったろ!」っていうので義務的に入れてる感があった。あと香田ってやつのキャラ付けもなんかあからさますぎる気がする。鮫島の正しさを際立たせるためだけのやつっていう印象が、映画だと特に感じなかったのに、原作の方だと感じた。課長、鑑識、鮫島。汚れきった警察内部で清いのはこの3人だけ!。みたいなのが、単に自分がひねくれてるだけなのか、そういう風に感じられてしまった。つまらないか面白いかで言えば面白かったんだよ。映画でわからななかったところ、例えば、映画で終盤あたりに、鮫島を見て逃げ出した公衆電話の男。なんだったんだ?って思ったんだけど、こういうやつだったのね。こいつのエピソードが映画だとばっさりカットされていた。ゴッドファーザーのジョニー・フォンテーンみたいなもんだ。とりあえず、面白かったよ。……ほんとだよ?。